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May. 2024
4/15から21まで開催されたミラノデザインウィーク2024(以下MDW2024)。核となるミラノサローネ国際家具見本市(通称ミラノサローネ)の開催中にミラノ市内ではフオーリサローネ(見本市の外)に参加する団体、企業、個人が至る所でさまざまな自由展示やイベントを行い、総称してミラノデザインウィークと呼ばれている。今年も日本企業の出展の素晴らしい展示が多く、海外に住む一日本人としてとても誇らしかった。
なかでも新進気鋭の若手デザイナーなどによるポータブル照明器具メーカーAmbientec(日本)と、2018年にミラノに初の旗艦店を構えたミラノ在住のアルゼンチン人調香師によるフラグランスブランドFueguia1833 との、灯りと香りのコラボイベント”Scent of Light”は、両方の世界を愛する身としてとても心惹かれるものだった。
Chikako Gowa(Instagram / chikakogowa)
通訳/クリエイター
大学在学中NYへ交換留学期間、フェアチャイルドパブリケーション広告部にて インターンシップ、パーソンズスクールにてファッション分析について学ぶ。 卒業後、某仏外資系企業に就職。結婚を機にイタリアへ移住。アパレル業界の通訳、2012年よりsen (www.sen-factory.it)のファウンダー兼クリエイターとして活動。彩り豊かな毎日を楽しむ三人の女の子のママ。
灯りと香り。それは特に毎日を過ごす住環境においてわたしにとっても重要な要素だ。
Ambientecの代表である久野氏とFueguia1833の代表であり調香師でもあるジュリアン・べデル氏は、共に「暗がりが大好き」という共通点を持つそうで、「煌々と照らす照明」ではなく「暗闇を愉しむための照明」ということがコンセプトにあるAmbientecのランプをベデル氏は、個人的に大変気に入っており、自宅はもとよりFueguia1833ショップオープン当初から各国の全店舗内にも配置していたと言う。べデル氏の自宅に置かれていたAmbientecのランプの写真が久野氏の目に留まったことで、ご縁あって実現した今回のコラボイベント展示。べデル氏は大の日本好きでもあり、昨年麻布台ヒルズに日本国内3号店をオープンしたばかりだ。また両ブランドの親和性は、互いの五感という感覚的なものに対する追求への直感力がベースとなっている。
Ambientec社の親会社は、水中照明の会社だそうで、どんなにカメラが高機能であっても水中での撮影に照明は必要であることをよく理解しているダイバーでもある久野氏が光源を自ら開発し、RGBlue という照明を開発した。水中で吸収されやすい赤色の光源を増やしているので、水中で青カブリする事なく、太陽の真下で撮影したような色合いを再現することができ、よって深海の魚が美しく写るのだという。更にLEDも自社開発している。写真のFOTICA(フォティカ)というランプは、ミラノ在住の大城健作さん(彼もまたダイバーでもある)デザインによるもので、地上から海中に差し込む太陽光線を意味するフォティカのネーミングの如く、上から下を照らす光だけでなく中心からも光を放つ、ツーウェイ機能を兼ね備えている。昨年初出展したミラノサローネの照明見本市、エウロールチェでプロトタイプを発表、今年のMDWではPORROのショップで展示販売を開始した。
ろうそくの光(フィラメント)に近い1番暗い光は暗い空間が大好きな久野氏自身のために作ったそうだ。この1番暗い光源は、一度チャージしたら500時間持続するというのだからすごい。またケルヴィンという色温度が1800/1900くらいがフィラメントに一番近いそうで、光の明るさに合わせて色温度も変えている。カシャロというランプ(フランス語でマッコウクジラを意味する)は、光源そのものを見せているライト。「Ambientecのランプが誕生したきっかけは、東北大震災後、荒んだ人々の心を温かくするものをということでポータブルのテーブル照明を作ろうと思ったからです。そして充電台で充電していて、通電が切れた瞬間にパッと電気がつく機能があるから災害時にも優しいのです。」と語るのは、水中照明のノウハウと独自の好みそしてマニアックなセンスを持つ久野氏。海の世界を愛することから、防水機能もあり、ボートやヨットに置いても素敵だ。
一方Fueguia1833の代表ベデル氏は、大の音楽好きでもある。「音」も香りや灯りと共に五感を刺激する。世界中にあるFueguia1833のどのショップにも必ずギターが飾られ、オーナー好みの音楽がかかっている。これまたこだわりの強いマニアックな人物だ。ウルグアイにある50エーカーに及ぶ広大なプランテーションで南米固有の芳香性植物を100種類以上、持続可能な方法で栽培、蒸留しているFueguia1833の香りはただの香水ではなく、とても深くスピリチュアル、自分自身の感情そして自然環境とのつながりを生み出す香り。その種類なんと125以上あるという。通常の香水は純粋なエッセンスは10%低度のものがほとんどだそうなのだが、Fueguia1833は50%以上のエッセンスが入っているがゆえ、純度が濃く、私達の身体にもよい。貴重な天然植物素材に関する入念な調査を定期的に実施するところから、調合、製造およびハンドメイドのパッケージの制作までの全ての工程に責任を持って取り組むFueguia1833。
マニアックにこだわりをもって追求し続けた先には特別なものが生まれるのだということをこの両ブランドの商品を見て強く感じた。個人的にも今の時代のキーワードであると強く感じている「コラボレーション」と「調和」。灯りと香りが調和することで、私たちの五感を満たすだけでなく、さまざまな感情や記憶を呼び起こし、空間そのものが安らぎやインスピレーション、幸福感のある場所に変わるというメッセージが込められた、AmbientecとFueguia1833のコラボレーション。素敵すぎる。
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